大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和57(オ)1202 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人金子光邦の上告理由について

原判決は、被上告人が上告人に対し昭和四五年九月一九日当時、本件土地を堅固

な建物所有の目的で賃料月額五万一七五〇円で賃貸していたこと、その後、毎年、

右土地に対する公租公課が増加し、かつ、右土地の価格が高騰したので、右賃料が

不相当になつたことを確定したうえ、昭和四七年四月一日以降の賃料については、

「甲一四、二二、二五、二六の一、二、二七の一、二、二八、乙六号各証及び鑑定

の結果を総合して判断すると、原判示別表(二)月額欄記載の各金額の限度において、

相当であると認めることができる。」と判示している。

ところで、借地法一二条一項所定の理由が存する場合に土地の賃貸人が同項の規

定に基づいて賃料の増額請求をしたときは、賃料は以後相当額に増額されるところ、

右の相当額を定めるにあたつては、同項所定の諸事情等を斟酌して、具体的事実関

係に即し、合理的な方法により定めることが必要である。そして、本件記録によれ

ば、被上告人は、基本的には、近隣の賃貸事例を比準した賃料を調整して相当額を

算出するのが相当であるとするDの不動産鑑定評価書(甲二二号証)によるべきで

ある、といい、上告人は、右評価書は、その収集に係る近隣の賃貸事例が規範性に

著しく欠け、恣意的な結論を導いていると批判し、総理府統計局発表の消費者物価

指数のうち家賃統計指数を標準として相当額を算出する一審鑑定人Eの鑑定結果が

正当である、というのである。

しかしながら、原判決は、相当賃料額算定についてどのような方法を採るかを明

らかにしていないのみならず、借地法一二条一項所定の諸事情等についてもなんら

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具体的な事実を確定していない。しかも、本件記録を仔細に検討しても、原判示別

表(二)月額欄記載の各金額に直接符合するような証拠又は根拠はなんら見当らない

ばかりでなく、原判決が挙示する証拠には、原審の認定の相当賃料額に反し、ある

いはこれにそわない趣旨の証拠が存在し、また、その証拠内容と原判文とを比較対

照してみても、原審が挙示する証拠のどの部分を採用し、どの部分を排斥して原判

示の相当賃料額を算定したものであるかを了知することができない。そうとすれば、

原判決が他になんら首肯するに足りる理由を示すことなく、原判決の挙示する証拠

及び理由だけによつて、昭和四七年四月一日以降の本件賃貸借の相当賃料額を算出

したのは、ひつきよう、証拠に基づかないで認定した違法があるか、理由不備の違

法を犯したものといわざるをえない。�

したがつて、この点の違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、本件については、相当賃料額の点についてさらに審理を尽す必要があるか

ら、これを原審に差し戻すのが相当である。

よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判

決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 矢 口 洪 一

裁判官 谷 口 正 孝

裁判官 和 田 誠 一

裁判官 角 田 禮 次 郎

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